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執筆者の写真MARYMOND JAPAN

New Artwork インタビュー 1.可能性が開かれた無限の空間

誰もが理解され、尊重される世界


「人には生まれつきの体質があるように、一生語っていく話もそれぞれに生まれ持っているのではないでしょうか。」

‐コ・ジュヨンさんのインタビューから

私たちは同じ空間に生きているが、実はそれぞれの世界に閉じ込められて生きているのかもしれない。鳥が水の中で生きられず、魚が空を飛べないように。それぞれの世界に慣れてしまった私たちはいつの間にか他者の世界を理解しようともしていなかったのはないだろうか。そのような視線の中で抑圧と重苦しさを感じている人々を、コ・ジュヨンさんは想像の世界へと案内する。一人ひとりの世界を理解し、主体性を尊重する空間。森の中で自由にさすらう魚のように思い切り解放感を感じられる平和の世界に。

 

簡単に自己紹介をしてください。

 こんにちは。イラストレーターのコ・ジュヨンです。私は環境を変える人ではありません。同じ生活パターンと風景に向き合って暮らしています。でも、周りの風景から興味深いものが声をかけてくる瞬間があるんです。その向こう側のストーリーを想像しながら、絵を描いています。


デザイナー コ・ジュヨンさん ©marymond
普段作業する時、一番大事だと思っている部分は何でしょうか。

 私はクライアントに依頼される作業を長く続けてきました。以前は装飾など外的なイメージの美しさに関して話していました。その中で、だんだん消費されるイメージと心に残るイメージについて考えるようになりました。その結果、これからは長く記憶される絵を描きたいと思ったんです。最近は、絵を見る人たちにどんなストーリーを伝えることができるかについて考えています。私は、一人のストーリーテラーになりたいんです。


「森の魚」アートワークのコラボ提案を受け入れた理由を聞きたいです。

 以前からマリーモンドについて知っていました。最初連絡を受けた時、「私が知っているあのマリーモンドで間違いないのかな」と思いました。すごくうれしくて、すぐに提案を承諾しました。日本との敏感な問題がイシューになっていた時期でもあったので、今回の作業が問題解決に少しでもプラスになってほしいと思って、一緒に作業しようと思いました。

 これまでよりもさらに拡張したマリーモンドの方向性を込めたプロジェクトを進行する予定だという説明とともに「森の魚」というテーマを聞いて、森と海が出会うというのはどういう意味を持つのか気になりました。それぞれ違う空間の森と海を行き来する魚の自由さが印象的でした。みんなが交じり合える理想的な空間が想像できる機会になると思いました。はじめてマリーモンド担当者とミーティングした時、デザイナーが表現したい感覚を生かして作業してほしいという言葉が今も忘れられません。作業方法を刺繍ドローイングのスタイルに変えてから自分の作業を信じてくれるクライアントに出会えたことがすごく嬉しかったからです。


アートワークの作業過程で大変だったことはありませんでしたか。

 信じてプロジェクトを任せてくれたので大変なことはあまりありませんでした。自由な環境の中で作業ができて満足しています。あえて残念だったことをあげると、スカーフの思案として作業したアートワークがとても気に入っていましたが、全部は発売されなかったことです。機会があれば他のアートワークも製品として使われるとうれしいです。

 大変だったことより楽しかったり興味深かった点について話したいです。まず、バッグに入れるメイングラフィックの作業は初めてでとても楽しかったです。バッグは衣類とは違うアイテムで、使う人にとって違う意味があると思うからです。自分がいつも持ち歩くものを入れるスペース、だからもっとも個人的な空間だと思います。どこかでその人を知るためにはバッグの中を見るとわかるという話を聞いたことがあります。服が外部を表現するものだとすれば、バッグはその人のストーリーを入れるものだと思います。人それぞれ自分の考えが込められたバッグを他人にどう見せるのかも大事な要素だと思いました。それでメッセージを持ったバッグを作ったんです。自分が持っているものをどう保管して、それと同時に自分のメッセージをどう表すのかを考える作業でした。


オーガニックコットンエコバッグ 森の魚 ©marymond
いろいろ悩んだ末に完成したアートレーベルの作品について説明してください。

 「森の魚」は、可能性が開かれた無限の空間、すなわち空、土、水のすべてが混じりあうある地点を意味します。常識的に森と海は分かれていて、現実では出会えない空間ですが、それぞれの世界が接する境界を想像してみました。「水に映った森の中を自由に行き来する魚」のように、みんなが一緒に舞い上がる空間を描いてみました。森に向かった魚たちが出会った空と木はどん形でしょうか。また、日差しのもとではじめて風を切る気分はどうでしょう。私たちもみんなそれぞれに違う世界で過ごしていますが、少しずつお互いに理解すると魚が自由に泳ぐ森のような地点がうまれるのではないかと考えたのです。今回の作業を通して誰もが理解され尊重される世界を見せたかったのです。



森の魚 by コ・ジュヨン ©marymond

 また、今回の作業では日本軍「慰安婦」サバイバーの吉元玉ハルモニの手書き文字を変形してみました。たどたどしい切れそうな文字の上に素朴な感じでテープを貼りました。人権のために叫ぶプラカードのような感じで、問題解決のためにたたかわれた方々の精神を継いでいく人たちの声を表現してみたかったのです。小さな変化の上に重ねられた大きな声を。


アートワークを通してマリーモンダーに伝えたいメッセージがありますか。

スカーフに書かれたメッセージをプラカードとして活用してキャンペーンをおこなっていると聞いた時、とても興味深かったです。日常的に使うすべてにメッセージを入れることが、マリーモンドがする仕事ではないかと思いました。何か大きく行動をしなくても、自分の生活の中から少しずつ堂々と意見を述べる環境が重要だと思っています。すべてのことは小さな部分からだんだん広がり、それに慣性がついて変化が始まるからです。人生を愛し周りを見回しながらみんなが仲良くする日が早く来てほしいです。誤解や葛藤は小さな部分を理解することから解消されるのではないでしょうか。自分が持っているメッセージを通して自分を愛し、他人に関心を持ち、良い社会に発展できたらいいと思います。


コ・ジュヨンさんの作業室 ©marymond
コ・ジュヨンさんにとって作業とは?

私は語る人になりたいです。最近いろんなストーリーを作ってみていますが、不思議なことに、結局は素材が違うだけでテーマは一つにまとまるのです。人には生まれつきの体質があるように、一生語っていく話もそれぞれに生まれ持っているのではないでしょうか。私が持って生まれたテーマは「自由さ」と「解放」だと思います。縛り付けられたものに少しでも息がつける余裕を与える人として記憶されたいです。


コ・ジュヨンさんにとってマリーモンドとは?

一歩一歩揺らぎなく自分の道を歩んでいく人々を応援するブランドだと思います。誰かのそばでひそやかに応援してくれる友達のように。芯が揺らいだり、心が傷つけられたりした時にそばで黙々と、そして心から自分の話を聞いてくれる存在だと思っています。勇気を与えることは誰にでもできることではないとマリーモンドに伝えたいです。今後も良い志を継いでいくマリーモンドを応援します。


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